桜-cherry rain-雨



『俺、リナに告白しようかと思って。』


バタン!と閉まった扉に、背中を預けて
あたしはそのまま力なく座り込んだ。

カーテンで閉め切られた暗闇。


虚ろな瞳で部屋を見渡すと
ふと目に付いた、ピンク色のクマのぬいぐるみ。



『ちょっとー!何でピンクなの!?あたし紫がいいって言ったじゃん!』


それはいつだったか
泉がゲームセンターで取ってくれた物だった。


『だって、桜ってピンクだろ?』

『でも、あたしピンクって苦手なんだけどー。』

『んな事ねーって。』


色んな雑音が混じり合う、耳障りなUFOキャッチャーの一角。


ポン、とぬいぐるみを宙に投げて
キャッチした泉は

『桜には、ピンクが一番似合うよ。』

そう言って笑っていた。



あの日から
泉のくれたぬいぐるみは、あたしの宝物。


だけど―――…




バン!!!


投げつけたカバンに
ぬいぐみは音もなく棚から落ちた。


あたしはそれを肩で息をしながら見つめる。



次第に滲んでいく視界に
ピンクのそれは、涙で完全に見えなくなった。