桜-cherry rain-雨



自分で頼んでおいて
何傷ついてんだ、あたし。

…バカだな、本当。



張り裂けそうな胸の痛みを抑え、あたしは笑顔を作る。


「よかったじゃん、連絡来て。」

「まぁなー!」

笑う泉に、胸の痛みが増していく。


だけど、心を偽って笑うのは
あたしの得意技だ。

泉の為に、自分の為に
身についてしまった悪い癖。



だけど、そんなあたしの心は
泉の次の言葉によって、いとも簡単に砕け散った。



「でさ、俺映画に誘ったんだよ!」

「……え?」

映画…?


目を丸くしたあたしに
泉は顔をくしゃくしゃに綻ばせて、身を乗り出す。



「聞いて驚くなよ~?」



イヒヒ、と笑いながら

「何と!いいよってさーっ!」

デートだぜ!?とはしゃぐ泉に、いつもの笑顔が出て来ない。


それどころか
喉は声を出す事さえ出来なくて。



裸の桜の木が

冬の木枯らしに吹かれ、視界の端で揺れた。