桜-cherry rain-雨



慌ただしく過ぎてゆく日々。


ただ加速する毎日に
あたしは言い聞かせるように

自分の気持ちをひた隠しにして来た。


そうする事でしか
こんな惨めな自分を守れなくて。



『…桜は、散る時が一番綺麗なんだよな。』


あの日、泉が言った言葉だけが
巻き戻された記憶に、しっかりと焼き付いていた。




「…散る時が一番、か…、」

落とすように呟いて、自傷的に笑う。



「ん?何か言った?」

「ううん、独り言。」

「桜、独り言言うようになったらオバさんだよ?」

「うるさい!」


じゃあ、この想いは?


散ったら
あたしのこの醜い心も、綺麗になるの?



泉の傍に居たくて

自分の為に
泉の恋を応援して

その裏で傷だらけになった胸に、繰り返し嘘をついて。



あたしは何度
涙に濡れた夜を越えれば

泉への想いを断ち切れるの?



本当は、そんな勇気ないくせに。


諦めるなんて
出来ないくせに―――。