少し沈黙が続き、その沈黙を破ったのは藤間くんだった。

「そいえば先生、なかなか来んなぁ。職員室、行ってみる?」

フリーズしていた私の脳が、その一言で動き出した。

「あ、うん。私、行ってくる。」

私は回れ右をして1歩踏み出し、職員室へ向かう体勢を整える。

「俺も一緒に行く。1人じゃ、お互い寂しいやろ?」

藤間くんは前へ2歩歩き、私の隣に立つ。


私は、迷った。

藤間くんと一緒に行ったら楽しいだろう。

だが、藤間くんは優しいから、気を使ってそう言ってくれてるのかもしれない。

藤間くんに嫌な思いはさせたくない・・・。


「別に気ぃ使こうてるわけやないからな。俺、寂しがりやねん。だから、なっ?」


私は藤間くんの言葉に目を点にした。

どうして、私の思ってることが分かったんだろう。


今まで私の思っていること当てた人なんていなかった。

何故なら、私が気持ちをあまり表現しなかったから。

他人に本当の気持ちを悟られたくない。

ずっと、そう思っていた。


直立不動の私の様子を伺っていた藤間くんが、口を開いた。

「あ、今“どうして私の思ってる事分かったの!?”て思っとるやろ?・・・どうしてだか、教えて欲しいか?」

絵に描いたようににっこり笑っていう藤間くん。


私は素直に頷いた。


「顔に描いてあってん。ははは、おもろいなぁ、香月さんは。目が点、直立不動ときたらそう思っっとるに決まっとる!!」


顔・・・に

顔に描いてある・・・ですって?