「紀一くん。」


どこに行くかわからないけど、ずっと手を引かれた。


「あっ!わりぃな。」


紀一くんも冷静さを取り戻したらしい。


「別にいいけど...」


私は、気まずさにつくっていたキャラを忘れて素だった。


「あのさ。あいつ等が言ったように君が好きなんだ。」


すごく照れたように言う紀一くん。


「ごめんなさい。」


「あっ!やっぱりかぁ。こんなヘタレ、ヤだよな。」


すごく傷ついた顔。


作り笑いをしててもわかる。


「違う。いつもの感じのがイヤ。」


「へっ?」


「鑑賞用なら、あんなのがいいけど。彼氏にするなら絶対にイヤ。」


私は、素直に言った。


「鑑賞用?よくわからないけどさ。あんな感じじゃなかったら、つきあってくれる?」


なんか、ホントにヘタレみたい。


「なんで、必死なわけ?」


なんか、自然と言い方がきつくなる。


「ずっと好きだった。あんなキャラだから萌ちゃんがいるのかと思って...」


「ふ〜ん。キャラをつくってたの?」


なんか、今のがすごくかわいい。


「だって、好きな子には振り向いてほしいから。」


なんか、紀一くんいじりにハマりそう。


「私とつきあいたいんだぁ〜。」


私は、笑顔で聞いた。


「も、もちろん。」


慌てすぎ。


「いいよ。」


「えっ?マジ?」


「だって、私も好きだよ。」


あっけらかんと言う。


予想外みたい。


まあ、つきあうタイプではないけどね。


だけどさ。


あの教室に入った瞬間。


憧れから好きに変わってしまった。