「なんや、そうやったんかぁ‥」
「そ、そうだったのよ。あれはその‥仕方なかったというか、何というか‥‥ん」



視界が、オレンジ色の視界が、一瞬だけ黒くなった。

その黒の中に見えたのは、金色の瞳。

唇に感じたのは、かすかな温もり。



‥そう、唇に‥‥って、ぇえ?
唇‥ッ!?

「よっしゃ、これで俺もお前もちゃんと覚えとる」
「って、何やってんのよ!!こんの、どアホオォォォ‥ッ!!」

金司目掛けて飛ばした拳は、あっけなく金司の大きな掌に収まった。

「まあまあ、ええやないか」
「『まあまあ』じゃないわよっ!!ここ、外!!」
「外じゃなかったら良かったんか」
「そう言う意味じゃないっ!!」



私たちは“前世”と変わらず、こんな調子。

こんな人とこれからずっと一緒だなんて‥‥


本当に、大丈夫かしら。


と思うものの、“前世”から始まっていた恋だから。



だから、彼とならどんな事があっても乗り越えられる。



沈みかけた夕陽を見ながら、金司の隣でそう思った。