「金ちゃん、何かあったんでしょ?」
「‥なぁ、お前らは『前世』とか、信じるか?」
「はぁ!?」
「‥前世、ねぇ」

問えば、2人はどこか遠くを見た。
行き成りそんなこと言われても‥。と目が語っていたが‥‥

「信じないとは、言えないかも」
「だな。俺たち自体、吸血鬼で、普通の人には信じられねぇような存在だし」

こういう事訊くって事はお前、前世があるのかよ。
紅は眉間に皺を寄せてこっちを見た。
そうや、俺には前世がある。

「俺、華と前世に時を共に過ごしたんや」

でも俺が早くに命を絶って、アイツに沢山辛い思い、寂しい思いさせた。
そして後世の今、俺はアイツと再会出来た。
根は嬉しい。
本当に、心の底から。

「でも、駄目なんや」
「何が?」
「華を受け入れたら」
「どういう事だよ」
「華が好きなのは過去の俺、“志黄”であって“金司”やない」
「‥‥」

俺は自分から華の気持ちに目を反らし、華の前から去った。
華の事が嫌いなわけない。
好きやから、華の前から去ったんや。

過去の俺を見るのもいいが、俺は華に“今”の俺を見て欲しいんや。

「何か、訳の分からん事言よるのは分かっとる。でも、俺は前世なんか、正直どうでもええ」



大事なのは、“今”なんやから。



2人は何処か満足のいかない顔で、俺を見つめてきた。