「は、華‥」
「‥‥」
いつからそこにいたのか。
という目でこっちを振り向いた金司さん。
いつからって、最初から。
彼が誰かと私の事を話している時から。
だから、私も全部聞いていた。
彼に『ウザい』だとか言われても、感じるものは別になかった。
それは、
私の気持ちが動き始めていたから。
彼を一発殴って、その場から走り去ろうと考えていた時。
金司さんが彼の胸倉を掴んだのが見えた。
だから中途半端な場所に出た状態で、私は足を止めてしまったの。
隠れようと思ったけれど、そう思った時にもう手遅れ。
彼が、私の名前を口にしたから。
「‥金司さん、離してあげて」
「お、おお‥」
離された彼はその場から立ち去ろうと、私の横を通る。
私も私で、気持ちが動いていたから別にいい。
でも、あんたは私の事を『利用』していたのね‥‥。
それで、タダで帰れるなんて
「勘違いしてんじゃないわよっ!!」
ガッという音と共に倒れるその体。
「お、おい!華っ!!」
大体、普通の女の子が手を出すなら平手打ちだろうけど、生憎私は拳で殴るの。
『利用』する子、間違えたわね。
バタバタとその場から走り去る彼。
その後ろ姿を見送りながら、虚しさが心に染みてきた。
「‥‥華」
「べっ、別に私だってアイツの事、そこまで好きじゃなかったし!!」
それに、気持ちは傾いていた。
彼にではなく‥‥

