放課後になって、大学校舎に行ってみた。
彼氏には一緒に帰るのを断って。
高等部はとても広いけど、大学部は高等部の倍広かった。
だから一人の人を探すのは、そう容易な事ではない筈なんだけれど‥‥

「‥華?」

後ろから名前を呼ばれて振り向けば、少し驚いた表情の金司さんが立っていた。

「どうかしたんか?」
「あ、あの‥」

訊きたい事は山ほどある筈なのに、いざという時に出てこない。
まるで、とても大切な人に大切な事を言う時みたいに。

何から言えばいいのだろう。
何から訊けばいいのだろう。

言葉を必死に探していた時、金司さんが膝を付く。

「っ、う‥‥」
「どうしたの‥!?」
「大丈夫、や‥気にせん、で、ええ」

金司さんは詰った声で、私にそう返した。
あの時にあげた血は、ほんのわずかだった。
もしかして‥‥

「寿命、いつなの!?」
「‥‥お前には、関係の、無い事や」
「そ、そうだけど‥‥。」

でも、放っておけないわよ。

「昨日言っていたじゃない。体内にある血が消化したら、‥‥死ぬって」
「‥‥」
「もしそうなってしまうなら、人の血を飲む事をしない貴方はどうなるの‥?」



死んでしまうって事‥ッ!?



私は金司さんと同じ目線になって、真剣に訊いた。
金司さんは俯いてしばらく黙り込んだ後、私の手首を強く掴んだ。

「ちょっと‥、っ!?」

手首に爪が食い込んできて、ピリピリとした痛みが走ると同時に鮮明な赤が視界に入る。
‥‥血が‥‥。
金司さんは、何も言わずに足を進めだした。
そしてある扉の前に来ると足を止め、その部屋の中に押し込まれた。

「きゃあ‥ッ!!」