My Mother

その数日後、あたしはひとつの言葉を知った。

『癌』

お母さんの病気だった。

お父さんの話によると大腸癌という病気で今までトイレで血が出てたはずなのに病気に行かなかったからすごく酷い状態だったということ。

手術すれば治るということ。

あと一ヶ月遅かったら命は危険だったということ。

あたしはそれだけのことを頭に詰め込む前に心が反応して涙が止まらなくなった。

助けて…神様。

そう祈り続けてただ泣いた。

小学校一年生の夏だった。

病院に行くとお母さんが笑ってくれた『桃子元気??』って。

でもある日行くとお母さんは深刻な顔をしていた。

『桃子、大事なお話があるの』

お母さんは点滴を付けている逆側にあたしを呼んだ。

『実はね…桃子は二学期からおばあちゃんのおうちから学校に行かなきゃいけないんだ』

『おばあちゃんのおうち??』

おばあちゃんの家は遠く離れた宮崎だった。

あたしたちは名古屋に住んでたから年に一回飛行機で行けるか行けないかなくらいの所だった。

『お母さんは?お父さんは?お友達は?』

あたしはわけがわからずお母さんを見上げた。

『お母さんは桃子のために病院で頑張って病気治すんだよ、お父さんはお仕事があるからおうちにいるの、お友達はまたお母さんが元気になったらすぐ会えるよ』

『やだ!!お母さんと一緒じゃなきゃやだ!!』

『ゴメンね…でもお母さんが元気になるためには仕方ないんだ…ゴメンね』

あたしは何も言えなかった。

お母さんがあたしのために頑張らなきゃいけないんだ…仕方ないんだ…頑張って納得しようとした。

あたしが泣いたらお母さんが悲しむから…。

幼心にあたしは『わかった』と言わなければいけないことを察知した。

本当は淋しくて淋しくて仕方なかった。

翌週にはもう空港にいた。

『行ってらっしゃい。わがまま言わないでちゃんと頑張るんだよ、お母さんも頑張るから』

お母さんは外出許可を得てあたしの見送りに来てくれた。

『お母さんも頑張ってね!桃子も頑張る!』

あたしは精一杯の強がりでそう言った。

最後まで笑って手を振った。