銀の月夜に願う想い


神秘的な雰囲気を持ちながら優雅に舞う服の裾。音楽は流れていないのに気にさせないほど、二人は周りを引き込む何かを持っていた。


ルゼルの顔は今までにないほど柔らかい。その青い瞳は目の前の黒い姫君しか映してはいない。

「良いの?セヘネさんがいるのではない?」

「僕は気にしないよ。君がいればそれで良いから」

元から好きで婚約している訳ではないし。

何より“今ここに誰よりも愛しい人がいる”

それが嬉しくて、緩みそうになる口元を必死で引き締める。


「踊れるんだ?」

「あら、私にそれを聞くの?」


元々彼女が拒否しなかった時点で踊れるのは分かっていた。

彼女は出来ないことを拒否しないほど無謀ではない。


「何処で習ったの?」

「ふふ……秘密」

ふんわりと微笑むレリアの笑みにつられて、思わず口元が緩む。

いつも人前で笑うなんてしないルゼルが笑ったことに、周りは騒然とした。


周りに視線をくべたレリアは艶っぽい笑みを浮かべる。

「あなたが婚約者さん以外に笑いかけたから、みんなが驚いているわ」

「普段から僕は笑わないのー。ていうか笑えないって言った方が良いかな」

「あら、どうして?」

いつも涼やかな銀の瞳が楽しげに向いてくる。

その目に映るのも、僕だけだ。

「レーアがいないから」

正直に言うと、きょとんとした彼女の顔が見える。
そして珍しく照れたように頬を染めた。

「バカ……」

小さく呟かれて、でも聞こえない振りをした。

だってレリアの口元が緩んで、嬉しそうな顔をしていたから。

嬉しく思ってくれたことが嬉しい。


「レーア……」

曲が終わったと同時に腕の中の華奢な身体を抱き締めた。

周りの顔色を窺いながら拍手をしていた人々の顔が凍り付いたのが雰囲気で分かる。