この場にいる男全員に言い放ってやりたい。
“僕のレーアを見るな”と。
でもそんなこと出来ないから、出来る限り自分に引き寄せた。
綺麗な顔に照れくさそうな笑みが浮かぶ。
「レーアのバカ。来るなって言ったじゃないか」
「言われたけれど、会いたかったと言ったら許してくれない?」
「………」
まあ可愛いことを言ってくれる。
抱き締めたくなって手を伸ばしかけたが、こんな場所だから我慢する。
「君には敵わないよ」
「ふふ……」
座ったままの格好で体をねじっていたから、顔の高さがいつもとは違う。
いつものように首筋にではなく、腰を引き寄せて腹部に顔を埋めた。
愛しい匂いを胸一杯吸い込み、顔を上げると微笑んだ彼女と目が合った。
思わず頬が緩んでしまう。
「愛してるよ」
「もう…」
彼女にしか聞こえないくらいの声で囁くと、くすぐったそうに笑ったレリアは桃色の唇を弧の形にした。
その口が動く。
『私もよ』
声には出されなかったけれど、しっかり伝わった。
顔を上げるとソファに膝をついて彼女の手を取った。
「踊って頂けますか、麗しいお姫様?」
「まぁキザだこと。……良いですわ、お相手いたします」
周りが二人がフロアに下りて来たのを見て口を開けている。
この場にいる全員が不思議に思ったことだろう。
ルゼルが女性にダンスを申し込むことは、今までありえなかったのだから。
演奏者たちすら動揺していて演奏する手が止まっている。でも二人は気にせずに緩やかに踊り始めた。
元々美しい顔立ちのルゼルとこの世のモノと思えないほど綺麗な造作をしているレリア。
その二人が一緒になると、まるで降臨した神々でも見ている気分になるほど。
