夜の私。闇を纏うメレイシアの加護を受けた姿。

大丈夫。絶対に知られたりしない。

“夜は全てを覆い隠し、真実を隠す時間だ”


メレイシアに諭された言葉がよみがえる。

そう、夜の帳は全てを包み隠してくれる。

美しいモノも。醜いモノも。

私すら……。



誰が気付くだろう?
金髪金眸の、まるでロアルのような色彩をしたレリアが、忌み嫌われるメレイシアのような黒髪銀眸になるなどと。


気付かれなどしない。

だってルゼルすら言われなければ気付かなかったくらいなのだから。


「大丈夫よね……」

「大丈夫に決まっています」


昼のレリアと夜のレリアをパッと見て見抜けるのは人間でないものだけだ。

ただの人間に絶対に知られたりしない。



昼は“アユラ”
夜は“レーア”

二つの顔を持つ私を知る者は神々とルゼル、この塔にいる女中の数人だけ。

バレる心配はない。


(大丈夫…)

レリアは膝の上で静かに眠る恋人の頭を撫でた。

柔らかな髪が指の間を滑っていく。

(私だけの王子様だものね…)


この人の視界に入るのは私だけ。

嬉しくない訳ではないけれど。

この人の純粋で曇りない瞳が私の決心を鈍らせる。


どうしてそこまで私を愛してくれるの?

何故私の心に入り込んでくるの?

お願いだから私の心を乱さないで。お母様の元に帰らないといけないのだから。


「私の、王子様……」

愛しているから。

お願いだから。





私を嫌って…。