ふわりとした柔らかな金色の髪を優しく撫でる。
暗闇の中、黒い髪のレリアは隣で眠るルゼルを複雑な思いで見つめていた。

(舞踏会……)

舞踏会は夜にあるもの。昼の私では決して行くことができない。それに行ったほうが良いのかも分からない。

「クー…?」

「ん……?」

眠たげな彼は少し目を開けると、また閉じてしまう。でも腕はしっかりと腰にまわっている。

「舞踏会、私も出たほうが良いのかしら…」

「舞踏会……………舞踏会!?」

まどろんでいた彼は素っ頓狂な声をあげてぱっちり目をあけた。

「何処で聞いた、それ!?」

「セヘネさんが言っていたから…」

「セヘネが言ったの!?ダメダメダメ!レーアは絶対に来ちゃダメ!」

どうしてそこまで勢いよく否定する必要があるのだろう。そんなにまずいことでもあるのか。

じーっと見ていると彼は乱れた髪を掻き上げた。

「舞踏会っていったら確実にあいつ来るんだ、そんなとこにレーア連れてけるわけないだろ!」

ちなみに彼の言う『あいつ』とは自分の父親のことだ。
レリアは思い返してみる。
初めて晩餐に呼ばれたとき、ルゼルとセヘネ以外に席についている人がいた。その人が彼の父親。そしてあれ以来何かと彼は警戒している。

「私を狙っているから?」

「……知ってるの?」

驚いた、という顔つきの彼にレリアは苦笑する。

「あんな目で見られていて、気付かないほうが変じゃない?」

初めて呼ばれたとき、来たのは彼の使いだった。そのときはただ余興のつもりかな、と思っていたのだが、レリアがあの場に入った瞬間にあの人の表情は変わった。

余興を楽しむ権力者から。





獲物を狙う、猛禽類へと。