銀の月夜に願う想い


でも今までメレイシアを呼び出せた者は誰一人としていない。皆他の神々に懇願したそうだが、彼女が来ない限り願いは叶えられないと神々は突っぱねたらしい。

一番信仰されているのはロアルだが、それでも神々の中でメレイシアが一番強いのは、多分彼女の経験してきたものの凄さと、その雰囲気にあるのだろう。あの雰囲気に屈しない者などいない。



でもどうしてそんな言い伝えがあるのかというと、それは初代がメレイシアを洗礼に呼び、願いを叶えてもらったことがあるから。それは確かで、決して揺るぎのない事実。

どうしてメレイシアがそのときだけ洗礼を授けたのかは知らないが、それ以来彼女は洗礼に顔を出さない。神々はメレイシアの判断なしに願いを叶える気は全くないようで、頼まれても首を横に振るばかりだ。



そして、この男には叶えたいことがある。だからメレイシアに付きまとう。
レリアが言うところ、メレイシアは毛嫌い状態で、ルゼルが行って以来森にさえ入れなかったというが。


そして今まで絶対に会わせようとしなかったレリアを、こんな状態で見せることになろうとは思わなかった。色恋沙汰が昔多かったこの男が、レリアを見て何もしないはずがなかったから。


溢れんばかりの怒りを隠し、ルゼルは父親から目を離す。レリアが入ってきた見た父親の目は、確かに何かを狙う目で。手を出されないはずが、ない。


(何とかしないと……)

たとえ相手が父親でも、レリアに手を出すなら容赦などしない。


見えないところで握り締めた拳が皮膚を裂いたことにすら、ルゼルは気付かなかった。