少しばかり神経質になっているセヘネを隣で見ていたトファダはルゼルを見る。相変わらず青い瞳は冷め切っていた。
「私あの方と仲良くなりたいのです!ですから、行くのを許してください!」
予想外の言葉に二人はぽかんと口を開けた。
セヘネは顔を染めている。
「あんな素敵な方、初めて見ました!美しくて気品があって、とても優雅なんですもの。私、初めて見て尊敬いたしました」
熱のこもった物言いに、二人は脱力してルゼルは椅子に、トファダはソファに座り込んだ。
そういえば彼女は疑うことなど知らない、純粋なまま育てられた娘だった。そんな娘がレリアを見ただけでそんな疑問、思い浮かぶはずがないのだ。
「分かりました、会うことを認めます。しかし彼女は私が連れてきます。おしゃべりはあなたの部屋で良いでしょう」
「本当ですか!?ありがとうございます、王子殿下」
嬉しげな彼女は礼をすると部屋から出て行った。
それを見て、トファダは肩の力を抜く。
「連れてくるなんて、どんな風の吹き回しですか」
「レーアもずっとあそこに閉じ込めてあって退屈だろうからさ。それにお前がいれば心配ない。後で迎えに行けば良いから」
「俺を使わないで下さいよ」
苦笑をするトファダはソファから立ち上がるとルゼルに一枚の紙を渡した。
「なに?」
「陛下からですよ。中身は読んでください」
言われたとおり目を通すと、ルゼルは露骨に嫌そうな顔をした。
「セヘネと晩餐……」
考えただけで憂鬱になる。
「レーアのとこ行けないし」
「少しくらいなら我慢できるでしょう。そんなに我慢出来ないなら他の女を呼びますが?」
「結構!」
バンッ、と紙を机に叩きつけたルゼルは仕事を開始する。
その顔は真剣そのものだ。
(やれやれ……)
この王子では、きっとレリアも大変だろうに。
思って嘆息するトファダだった。
