銀の月夜に願う想い


一度トファダはレリアの夜の姿を見たことがあった。


長い真っ直ぐな髪は濡れたようで、銀の瞳はまるで研ぎ澄まされた刃のよう。
微笑んではいても雰囲気の中の鋭さは消えず、ずっと威圧感が消えなかった。


それを知っているトファダは昼にしかレリアに会いに行かない。
たとえ夜行っても、王子が入室の許可を出してくれまいが。


「そんなに彼女、良いんですか?」

「最っ高。もうレーアじゃなきゃ満足できない」

一目でこの王子を魅了したその人は、夜のほうでも虜にしているようだ。
それでなければ毎日楽しそうに夕方彼女の部屋になど行かないだろうが。

「彼女、身体のバランスも良さそうですしね」

言った瞬間、鋭く睨みつけられた。

「手ぇ出したら問答無用で殺す。変な妄想もしない!」

「しませんよ。妄想の種に使うほど女に困ってません」


それなりに見目の麗しいこの護衛殿は、確かに王宮の女たちから騒がれるほどだ。女には不自由しないか。

「やばいと思うよ……自分でもここまでどっぷりはまると思ってなかった」

あまりにも可愛くて。
可愛すぎて。


壊してしまいたくなるほどに。


夜自分の腕の中で喘ぐレリア。潤んだ瞳は理性を刺激して、それは理性と感性の境界線をおかしくしてしまう。


「はぁ」

思い出したらまた憂いが戻ってきた。

そんなルゼルを見てトファダは内心でため息をつく。

「心配性ですね」

「レーアが可愛いのがいけないんだ」

「惚気は良いですよ」


聞いていたら日が暮れるから。

ルゼルがムッという顔をして彼を睨み付けた。


と。

「殿下?」

隣りの部屋から顔を覗かせたのは、セヘネ。
ルゼルの顔から子供っぽさが消える。