「レーア…大好きだよ」
優しく引き寄せられ、口付ける。
この甘い時間が大好き。彼はこの瞬間だけ自分のものでいてくれるから。
「私だって、好きよ――」
あなたが思う以上に……
朝、ルゼルを送り出したあと、レリアはいつものように外を見ていた。
「ねぇ…」
「はい?」
近くでかいがいしく動いていた使用人が返事を返してくる。
彼女の名前はミース。ここに住むようになって知り合い、ずっとレリアの世話をしてくれていた人。だから、既に四年の月日を一緒に過ごしていることになる。
「少し部屋を出ても良いかしら?」
「この塔から出なければ大丈夫ですよ。お散歩ですか?」
「ええ。毎日こもっていても気が滅入るばかり。気分転換にちょっと行ってくるわ」
そう言ってレリアは部屋を出た。
長い間一緒にいたことで、二人は仲の良い親友みたいな関係だ。
だからレリアの秘密を知っているし、夜ルゼルが何をしているのかも知っている。
でも彼女はそれを告げ口などしない。二人の恋を知っていて、応援すらしてくれている。
(何処へ行こうかしら…)
あらかたルゼルが用意しておいてくれるから、そんなに不自由はしていないし。
見るようなところは、あまりない。
ふう、とため息をついたとき、レリアは小首を傾げた。
(あれは――)
思って、どうやら迷子みたいだから声をかけた。
「こんにちは」
彼女のほうは急に声をかけられて驚いたようだ。その顔には不安げなものがある。
「えっと……」
「お困りのようでしたので。良ければ道案内をいたします」
目の前の何処かしら危なっかしい雰囲気を持つ彼女は、ほっとしたように緊張を緩めた。
