銀の月夜に願う想い


「心配性ね。大丈夫、お母様は約束を違えることはないわ。お母様は律義な人ですから」

「でもなぁ……」

納得しない顔の彼。

闇の眷属がみんな嘘つきなんて、それは人間が作ったデマカセ。
現に闇の眷属の筆頭であるメレイシアは嘘が大嫌い。女神メレイシアの前で嘘をついたら容赦なく殺される。ついた嘘がバレないなんてことはあり得ないから。そしてそれは闇の眷属の中では暗黙の了解にすらなっている。

だからレリアは神々に「絶対メレイシアに嘘はつくな」と言われて育った。
メレイシアは自分に対して嘘をついた者は生かしてなどおかないから。

たとえ愛情を注ぐ子供だろうと。


「ねぇー、レーア」

「はい?」

「君は僕のことずっと愛してくれるよね……?」


下から覗き込むような彼の視線に、レリアは汗で張り付いた髪を払った。

「おバカさん。私は初めての夜に言いましたよ。『あなたが愛してくれる間は私も愛します』って」

「それは君の義務だ…僕がここ、北の塔の管理者だからさ。でも、僕は君の"心"が欲しいんだ。そんな偽物要らない」

本当は大事にされて育てられるはずだった王子の彼。でも、ロアルには特別な供物をと捧げられた彼に、両親の愛情は無いにも等しい。

今ロアルの加護を持つ彼は、この王宮では一番大切にされている。
でも注がれる愛情に純粋なものなど、ほとんどない。だからその分彼はレリアに愛情を求める。愛した人に心から愛されることを望んでいる。


親の薄い愛情以上の愛情を。


「愛していることを信じてはくれないの?私は誰よりもあなたを愛しているから、だからこうして傍にいるのよ?」


愛しているから夜こうしてあなたが来ることを心待ちにするというのに。