銀の月夜に願う想い



彼女が心を閉ざしたのはそのせい。

昔はとても綺麗で優しくて、よく笑う女神様だった。


でも彼女が一番嘆いているのはそれではない。



『何故私は、世界を創造し直さなかったのだ……』


たとえ自分を嫌う世界であっても、自分の恋や立場のために人を殺せなかったこと。

自分の殻を破ることの出来なかった自身の無力さを悲観しているのだ。



ロアルは今にも消えそうな腕の中の女神を抱き締めた。



『君は、本当は優しいから』

『……っ』

『こうなるんだって、思ってたよ』



世界の母は、自分の子供を殺すことなんて出来なかった。

たとえ自分の恋が認められなくても、誰からも愛されなくなって忘れ去られようと。


彼女にとって世界は何よりも大切なものなのだから。



『今回だって思いっきり反対なんて出来なかっただろう?』

『……ぅっ』

『だってあれは、僕たちが望んだことそのままだ』



祝福されて子供を産んで。

お互い離れていたとしても強く思いあっている。


誰よりもこの二人はそれを望んで、けれど人から嫌われることを恐れて出来なかったことだ。


出来ないのではない。やる勇気がないのだ。


だからこそ今日までこうして人間の作ったルールに縛られて生きてきたのだから。