お腹が痛い。
子供がいるからあんまりキツく絞めないでって言ったのに、返って心配だからと言う理由でコルセットをガッチリ固定された。

あんなに子供を産むことに反対だったくせに、説得を諦めたミースは今は色々親身にしてくれている。


まあ堕ろすなら今にでも、と思っているとは思うけれど。



きらびやかに飾られたホールに入った時から、周りの視線が集まってくるのが分かる。

自分が目立つ顔をしているのは分かっている。別に自慢な訳じゃないけれど、ここまで視線を集めれば分かるだろう。




まだ始まって間もないのにダンスを申し込んでくる男たちをかわしながら、周りに視線を巡らす。


いた……。



いつかのようにソファに座りながら退屈そうにしている彼。間違えるわけがない。その濃い金髪も、後ろ姿も。


でもそのすぐ隣に、いらない存在もあるけれど。



その人のすぐ後ろに立って、その人の目を覆った。



「だーれだ?」


一瞬ビックリしたように肩を跳ね上げたあなたは、幽霊でも見たかのような顔で振り向いてくる。
でもその人の口が動く前に、違う声が邪魔をした。


「アユラさん!?」


驚いたって感じの顔をした後、キラキラした顔をするセヘネに私は微笑みを返した。


「こんばんわ」

「この頃見ていなかったので心配していたんです。何かあったんですか?」

「ちょっと体調を壊していまして」



でももう大丈夫、と言うと彼女はホッとしたような顔をした。
その間もずっと、ビシバシ視線を感じるけれど。


「……セヘネさん、少し殿下をお借りしてよろしいですか?」

「え……ルゼル殿下を?」

「はい。ダメかしら?ほんの少しのお時間だけ」

「すぐに返してくださいね……?」



顔をほんの少し赤らめるセヘネは、完璧に恋人を独占する乙女で。
ルゼルが嫌そうな顔をしてセヘネを睨み付けているのが分かる。

そんな彼の肩を叩き、顔を元に戻させてから二人でホールを抜け出した。



移動する間、二人の間に会話はなかった。



近くにあった無人の部屋に入って振り返ると、冷えきった瞳に出会った。