レリアが夜会に来てから一ヶ月経った。

あれからというものセヘネは何かとルゼルと距離をおいて近付いて来ないし、女の誘いを断る口実が出来て実に嬉しい。

今までも誘われれば断っていたが、ルゼルが気兼ねしていると思われる婚約者が役不足の箱入り娘のセヘネだったから、

「黙ってればバレない」

を誰もが口にしてきた。


でも相手があのレリア。夜は配色がメレイシアそのもので、女中にすら近寄られないレリアに恐れをなして歯向かおうとする者はほとんどいない。

姿が似ているだけで恐れられるほど、この国でメレイシアは絶対的な威力を持っている。


そんなふうにレリアが気にしていることを理由に女から身を守っているのだが、変化に嫌なモノは付き物で。


あれから一ヶ月、セヘネが言い触らしたか違う情報源から情報を仕入れたのか、セヘネの母親が煩い。

「うちの娘より何処ぞの馬の骨とも知れない女を重宝する男の気が知れない!」

とか

「大人しい顔してやっぱり卑劣なことをしているのだわ」

とか

「あんな売女にうちの娘の何処が劣っていると言うの!」

だの。

ほとんど困惑した顔をして適当に聞き流していたが、自分のことは良くてもレリアの悪口だけは聞き捨てならない。

だからそれを言い終わる前に胸倉掴み上げて、

「次レーアの悪口言ったら生きてられると思うなよ」

って最大の脅し文句を低い、怒りを押し殺した声で吐き捨ててやった。

それにはさすがにあの傲慢鬼畜で自己中心的の母親も腰を抜かして額から脂汗を流していた。

それでも毎日めげずに嫌味を言って来る(でも怖いからか絶対にレリアのことは出さない)。


それに今まで以上に監視が厳しくなったから夜レリアに会いに行けなくてこの頃寝不足が続いている。

レリアが傍にいないと寝れないルゼルの体質を知って邪魔してるんじゃないかと、眠い頭で疑心暗鬼状態だ。