「お前…、いつからそんな甘くなったんだよ」
呆れたような顔をしている友人にその答えを返したのは、ルゼルではなかった。
「私と会った時はもうこんな感じでしたわ」
柔らかな声が耳に触れてくる。
フワッと微笑んだ黒い髪のレリアは邪魔そうに脇の髪を払った。
「四年前私と会った時はもう。ね?」
「そう?」
「四年前……?」
呟いた彼は驚いたようにレリアを見た。
「じゃあ君が四年前出会ったって言う、例の想い人!?」
今更理解するところ、実に物分かりが悪い。
レリアが見上げてきた。
「教えてなかったの?」
「だってこいつ女タラシだし。連れてこいって言われるの目に見えてたから」
本当は今だってさっさと追い払いたいけれど、我慢する。
わずかに睨み付けてやると彼は降参とばかりに両手を上げた。
「お前の女には手を出さないって決めてんだよ。手なんか出すわけねぇだろ」
「それもそうか」
何せルゼルの後ろには天下のロアルがいる。そんな、神に守られているルゼルの女を取ろうとするなんて自分の首を絞めるようなものだ。
何か好奇の視線を向けられるからそっぽを向いていたら、視界の端でレリアが動いたのが分かった。
レリアはアルスを見ている。
「あの、見て分かりますか?」
何のことやら分からないからレリアを見たら、アルスは少し考えるような間を作ってから頷いた。
「少しだけなら」
「やっぱり分かります?」
「そんなに気にするくらいじゃないけどね」
自分が分からない話を話しているというのは如何せんイラッとくる。
そんなに親しくすんなって言ってやりたいのを我慢しながらアルスを睨み付けた。
