もうこれ以上、何も望まない・・・
すると・・・
「真咲ちゃんは、恋を恐れていないか?」
恋を恐れる――?
「それは、どういうことです?」
すかさず尋ねた私に、首を捻ったものの。
「う~ん、上手く言えないけど・・・
俺には、恋に落ちた時に、“今”ある大事な物を失うことを 恐れているように感じるんだ。」
今ある大事なモノを、失うことか・・・
その言葉に、自嘲的な笑いが出てしまう。
「…岩野さんに、ウソは罷り通りませんね。
きっと、そうなのだと思います。 失うことが恐いんです――」
亜実と仕事を言い訳にしている、最低な私。
認めたくないけど、ずっと自覚はあった。
だけど人に対して、何も求めなくなった理由はきっと。
あまりに突然、母が亡くなったことがきっかけだと思う。
それから、今あるモノに固執を始めたのかもしれない。
大事な妹の亜実と、責任のある仕事に対して・・・・

