この小柄な身体で、どこに入るのか。
やっぱり亜実は、母にそっくりだ・・・
「あら、また真咲ちゃんが残したのね!」
頃合を見計らって現れた、奥さん。
「亜実に負けるなんて、情けないんですけどねぇ・・・
マスターに、タッパーを貰ってくるんで 亜実をお願いします。」
このお店は、食べ残しの持ち帰りを許してくれる。
翌日の朝に温めると、これまた美味しかったり。
「もちろん、それが目的だから! う~んと、ゆっくりで良いからね?
亜実ちゃんと、お喋りしたいのよ♪」
奥さんはニッコリ笑って、亜実に話し掛けている。
優しい奥さんだけど どうやら、亜実は特別みたい。
こんな風に愛して貰えて、本当に有り難いコトだ。
「岩野さん、すみません。 タッパーを貰えます?」
「おぉ、ちょっと待って!」
カウンター席で、寛いでいた岩野さん。
厨房へ行き、タッパを持って来てくれた。
「ありがとうございます!」
そして、ここから2人の時間。
云わば、親子の会話みたいな・・・
「相変わらず、仕事は忙しいのか?」
心配そうに尋ねる 岩野さん。
来る度に、同じ質問をして下さるほど。
「うーん、忙しくないって言うと嘘になりますねぇ。
でも、まぁ何とかやれてますよ。」
心配はさせたくないけど、ウソはつきたくない。
これも信頼のおける、平野さんだから。
「そうか・・・ ちなみに、良い男には出会えたかぁ?」
「残念ながら、いませんよぉ。
私には亜実が居て、仕事命の生活だから これ以上、何も望んでませんって!」
自嘲して、平野さんに返した。

