数万円だとしても、贅沢品に使うのは気が引けるのにね…。




次はー…〇〇駅、〇〇駅…。


特徴的なアナウンスによって、ようやく息苦しい空間から抜け出せた。




いつもならこの時点で、音楽の力ですっごくテンションが上がっているのに。



…なんで落としちゃったんだろう?




呆れながら改札前に辿りついて、パスを取るために慌ててカバンを探ろうとすれば。



「…キャッ!」


突然にカバンを探ろうとした私の右腕は後方へと、強い力でグイッと引っ張られた。




幸い私はドライビングシューズで踏ん張りが効いて、よろける事はなかったけれど。




「ごめん、大丈夫…?」


「・・・え」



背後で響いた聞き覚えのある声色に、思わず息を呑んでしまった・・・