「う~ん・・・
やっぱりどの駅にも、そう言ったお届け物はないそうです」
「そうですか・・・」
性悪女である、逸見さんを言い包めることには成功したけれども。
肝心の音楽プレーヤーは捕獲出来ずに、思わず肩を落としてしまう…。
最寄の駅舎に寄ると、親切な駅員さんが区間の駅すべてに問い合わせてくれた。
けれども、残念ながら結果はコレだった。
「言い難いんですが・・・
誰が落としたのか、分かり辛いような品ですと。
見つけた人がそのまま…なんてことも、ザラにありまして」
「そうですよね――
お手数おかけしてすみません、ありがとうございました」
力なく笑って椅子から立ち上がると、優しい駅員さんにお礼を伝えた。
最後まで親切な駅員さんに一礼をして、沈んだ気持ちを胸に駅舎をあとにする――
ガタン、ガタン…と、小刻みに揺れる振動がよけいに虚しさを募らせていく。
お金を貯めて、やっとの思いで手に入れた物だったのにな・・・
ウチの家計は別にお金に困っている訳でも、私の稼ぎも少ない訳でもない。
だけれど、これから教育費などの嵩む亜実のことを考えれば。
無駄遣いは避けたいと思うのが、親代わりなりの心情で。
勿体無い気もするけど、新しいプレーヤーを買うしかないかな…?

