それが会社というトコロであって、上手く立ち回る処世術だから・・・
「会社外のことで、貴方が私に干渉する言われもないし…。
さらに付け加えて…、まだ貴方は仕事中だと見えるけれど。
無駄口を叩いている暇があるなら、さっさと責務を全うすべきと思うわ。
貴方が戯れ言を叩く今も、会社には時間外手当を支払う義務が発生しているのよ?」
事務的かつ淡々とした口調で捲し立てる私に、気分を害したらしい逸見さん。
「っ、分かりました…!
仕事があるので失礼しますっ!」
さっきとは2トーンも低い声色を響かせると、1課へとそそくさと退散して行った。
地声の低さに驚いた男性社員が数名いる事も、寧ろ呆れてしまうけれども。
あんな裏がありありで、お頭(オツム)の足りない女には。
冷静かつ論理的に発してしまえば、何にも言えなくなるのよね。
あ~、鬼退治した桃太郎の気持ちがよく分かる…!
…って、時間をムダにしちゃったわ――!
必然的にいつもより多くなった荷物を抱えて、急いで退社することにした。

