イライラしたくないけれど、どうしても苦手だもの…。
「いつもはぁ、仕事ばっかりしていらっしゃるのにぃ。
どうしたんですかぁー?」
裏声候(そうろう)のひっくり返ったような甲高い声。
ドギツイ公害…いえ、香水臭が、どんどんこちらへ近づいてきたし。
それは営業一課のアイドルと言われてる、逸見(イツミ)さんの事だ。
だけれど、間近で見るとマスカラで睫毛がダマダマだし。
巻き髪も痛いほどクルクルで、髪の毛の痛み加減がイタイ…。
おまけに、この語尾を延ばす話し方が鬱陶しい…!
確かに、男ばかりの社内では24歳って若いけれども。
世間一般ではね、ソロソロぶりっ子もイタイお年頃よ…?
そんな感じで私は、この女が大キライだったりする…。
何でこのタイミングで、今日に限って、コイツが現れるワケ…?
「…今日は、ちょっと用事があるのよ」
だとしても、ここは職場であって私は役職者。
そんな私情や感情を、表に出してはいけないのだ。

