不思議なモノで仕事に取り掛かり始めれば、すっかり頭の片隅に追いやられてしまう。



そう…今日は絶対に定時退社をして、駅舎へと向かうつもりだったから。



何だかんだで諦めの悪い私は、そのために仕事を頑張っていたのだ――…





「ゴメンなさい、今日は失礼します!」


あっという間に終業時間がやって来て、急いで机の上を片し始めると。



「あれ、珍しいですね?

いつもはもう少し残られるのに…」


「えぇ、ちょっと用事があって――」


課員が物珍しそうな顔で見てきたけれど、もちろん理由は伏せておいた。



余計な詮索をされる、引き金に為りかねないしね…?





「ええ~、係長が珍しいですねぇ?」


「・・・・・」

甘ったるい耳障りな声色が耳に届いた私は、思わず無言になってしまう。