恋 理~renri~



緑に覆われた道を進む中で、花束を抱えた大和が腑に落ちない顔つきをした。



「それにしても…、どうしてこの花なんだろうな?」


「大和は…、コレの花言葉って知ってる?」


出せない答えに首を傾げている姿が可愛くて、思わずふふっと笑う私。




「色々あるんだけど…、そのひとつに“愛の誓い”という意味があるの。

きっとね、甲斐さんからの想いが詰まっているのかなと思う…」


母が人生を懸けて、ただ一筋に愛した人から贈られたお花は、深紅の薔薇(バラ)。



小さな頃から母が好きだと言って、よく家中に深紅の薔薇が飾られていたし…。



「あとね…何回も来ていたのに、今ごろ気づいた事もあるんだ」


「ん、何を?」


薔薇の話に納得して優しく笑った彼は、コチラをジッと見据えていて。



「どうして青山霊園に、東京が地元じゃない母の墓前があったのか――」


「お母さん、地方出身なのか?」


その問いにコクンと頷いてから、薄暗く染まる空を一度見上げた私。



「何で青山なのかって、ずっと疑問だったんだけど今日分かったの。

…きっと一生を終えて眠りに就く時、もう離れ離れが嫌だったんだと思う。

代々続いているアノ人の御墓は、この霊園内にあるでしょ…?」


甲斐さんのご先祖が眠るお墓があると知っていても、子供の私には疑問だった。



だけどね、年を重ねた“今”だから分かる事があるみたいね…?



「それならお母さん、天国で想い人を待ち続けているな」


「…うん、そうだね」



きっと甲斐さんから母へ捧げていた、一生の愛の誓いの証に気づいたから・・・