せっかく涙腺が落ち着いていたというのに、今度こそ止める手立ては見つからない。
母の墓前を前にして向かい合った私たちの間を、サーっと優しい風が流れていく・・・
「沢井 真咲さん…、俺と結婚して下さい」
「ひ…、く…っ」
「…もしかして、今ごろ嫌とか言うの?」
開かれた箱の中でキラキラと輝くダイヤモンドは、幸せへの足掛かりだから。
「ちっ…、…がう」
涙と驚きと嬉しさによって言葉にならない私は、フルフルと頭を振って返せば。
「それなら、俺と幸せになってくれる?」
「う、ん…っ、りがとぉー…」
今度の質問にもやっぱり涙が邪魔をして、上手く答えられない事に優しく笑うと。
彼が屈んで溢れ出る涙を拭ったあとで、私の左手薬指へとソレを収めてくれた。
そうして微笑み合えば、こんなにも愛しい人がいる事にひとつ幸せを覚えるね…。
「安心した、サイズもピッタリだ」
「うん…、凄く綺麗…ありがとう」
緩む口元を隠せずにいれば、嬉しそうな顔を見せてから彼は墓石へと向いてしまう。

