歌舞伎座でも出なかった涙が、真実に触れたからかとても止められなくて。
まして頭を撫でてくれる手の大きさが、ソレを許してくれるからムリだ…――
「うぅ…、おか、あさん…ごめっ…」
大人の事情なんて分らなかった子供の私は、母の気持ちすら蔑ろにしていたね…?
日の目を見なくても、彼の伴侶になれなくても良いほど、甲斐さんを愛してたから。
私に事情を話してくれた時も、亜実の出産時だってそう…、母の愛情だったのにね。
甲斐さんに私と亜実を会わせなかったのも、彼を愛するがゆえだった事にいま気づいた。
「っ、うわぁあああ…」
彼だけじゃない…、甲斐さんを恨んでいた私の方こそ気づくのが遅すぎたね。
何も分かっていないまま、愛のカタチと体裁ばかりに囚われていたのに・・・
「…ごめっ、も、大丈夫」
泣きすぎてブサイク極まりない顔を隠そうと、俯きながら彼の胸を押せば。
「…うん、…確かにお母さんに怒られるかもな?」
「・・・ふふっ」
そんな心情を察して茶化してくれる大和は、やっぱり私の心を繋ぎとめてくれる。

