恋 理~renri~



だけどボヤケそうになる視界を堪えて、その手紙一点に神経を集中したの。



きっと今読まなければ、一生見られないままに封印してしまいそうで・・・




【先述したとおりに、私が愛しているのは今も昔も変わらず、彼女一人だからだ。

今なお大きくなり続ける甲斐家を理由に、君たちを認知出来ずにずっと苦しかったが。

麻由美に白無垢とドレスを着せて公然と幸せにしたいなんてな、…すべてが遅すぎた。


愛する彼女が亡くなってから、すべてが間違っていた事に気づいた私は大馬鹿者だ…。


人間国宝という名誉ある称号も、甲斐という名前も、剥ぎ取れたらと思う日々を生きている。

だが…背負ってしまったモノを今さら捨てれば、ソレこそ麻由美への裏切りと思えてならない狡猾な人間だ。


こんな最低なヤツが父親になる君たちの心情を考えれば、ますます憎まれても致し方の無い事だが。

それでも…どうか麻由美を思い続ける事と、君たちへの保証はさせて頂きたい――

そして大切な君たちの今後を思えば、今まで通りに私と直接会う事は避けたいとも考えている。

勝手ばかりを言う最低な私だが、今後の人生は陰ながら支えさせて欲しいと思う。


真咲さん…、素晴らしい方とのご結婚おめでとう――どうか…どうか幸せになって下さい。

そして亜実ちゃん…、いつでも笑顔を絶やさず、優しい心を持ち続けて下さい。

伝えたい事がありすぎて上手くまとまらず、乱文失礼いたしました。
        
 
誰より愛しい君たちへ捧ぐ…。 甲斐 連太郎】




「よく頑張った」


「ひっ、く、ごめ…」


読み上げる最中にツーっと伝い落ちていた涙だけど、どうにか終える事が出来て。



その瞬間に私の身体は、グイッと大和の温かい胸へと収められていた・・・