恋 理~renri~



大勢の人で賑わう銀座を抜けていく中、BGMだけが車内を彩る音として響き渡る。



たった数時間の出来事は、私の人生観を大きく覆すモノとの出会いばかりで。



やっぱり動揺していたのは事実で、大和の方もまた何かを考えていたらしく。



無言の空間に身を委ねつつ、淡々と移ろいゆく景色を眺めて花束を抱えていた・・・




「やっぱり休みだから、道も混んでたな」


「疲れてるのにごめんね…?」


何処か都会の喧騒を忘れさせる場所に停車させ、ブレーキを踏んだ大和に謝ると。



「それは真咲だろ?」


「…もう、またはぐらかす…」


流れでエンジンを止めた彼が、こちらを捉えてフッと笑って宥めてくれたから。



いつの間にか力んでいた身体は、大和の優しさが解きほぐしてくれるようだね…。



「暖かくなって来たよな」


「うん…、もうすぐ夏だしね」


「なんか早いな…」


「ホントだね――」


花束たちを手にしたまま目的地へと歩いて行くと、木々の擦れ合う音が心地良い。



頬を掠める優しい風さえ、私を目的地へと息急いで向かえと言ってる気がして。



整理しきれていない脳内を振り切りながら、彼と2人でその道を辿って行った・・・