恋 理~renri~



「それじゃあ、俺たちも行こうか?」


「…うん」


周りの喧騒と視線を感じながらも、とにかく場を離れようと歩き始めた私たち。



新鮮な生花から放たれる、甘くて瑞々しい青々とした香りが鼻腔を掠めながら。



この場を早く離れなきゃ…という、大人としての義務感にただ覆われていた・・・




車を止めていた隣接の駐車場に到着すると、インテリジェントキーを解錠する大和。



「…全部、後ろに置こうか?」


預かってくれていた封筒と花束を差し向けると、どことなく心配そうに窺う彼。



「ううん、気をつけるから…持ってても良い?」


「もちろん」


「ありがと」


私の返答に安心したのか、フッと優しく笑ってからソレらを手渡ししてくれた。



本革シートの助手席へと身を預ければ、エンジン音とともにエアコンの風に晒される。



同時に抱えられるサイズとはいえ、爽やかな花の香りが一気に立ち込めていくようで。



車内を突き抜けていく青々しさは、心の落ち着きまでもを齎してくれる気がする…。



「…大和、お願いがあるんだけど」


「うん、俺も同じ事考えてたよ」


「行って貰っても良い?」


運転席からこちらを見た大和が頷くと、そのまま静かな滑り出しで発車した・・・