恋 理~renri~



大和の怪訝な声色にフッと笑う姿は、どこか優雅で妙な落ち着きを払っていて。



真っ黒な髪を撫で下ろして、深緑の着物に身を包んだ男性の態度に首を捻る私たち。



大和と顔を見合わせれば、どうやら彼の方も男性との面識はないようだから。



「すみません、何か…」


「ああ…安心して下さい、初対面ですから」


「あ、そうでしたか…」


見た目でいえば私より若く感じるけど、まったく面識の無い彼は誰かが分からない。



遠慮がちに尋ねればまた笑って、その人形のように綺麗な顔立ちは周りの目を引く。



現に混雑するロビーに居た人たちは足を止めて、彼と大和を窺っているもの…。




「誰とは言えませんが…これを預かっています、どうぞ」


そんな状況に苦笑しながら、男性が手にしていた封筒と花束を差し向けて来た。



「・・・わ、たしに?」


「はい、間違いなく貴方ですよ」


誰なのかも分らない人の行動に目を見開けば、コクンとひとつ頷いた男性。



困惑を隠せずに大和を一瞥すると、目が合った彼は眉を潜めて窺っていて。



「どうして…」


「これは師匠からの希望なのです…、お願いします」


取り敢えず疑問を口にしようとすれば、ソレを阻むように飛び出たフレーズ。