仮にも大好きだった母が、その生涯を懸けてひとすじに愛した人だから。
もう恨んだり、憎んだり、嘆いたり、そんな負の感情は持ちたくないと思えたの。
「…大和が居てくれて良かった」
「真咲・・・」
その言葉で彼の驚いた表情が笑顔に切り替わった瞬間、私もつられて笑ってしまう。
確かにアノ頃とは違って、年齢を重ねた今だから理解や納得出来る事もあるけど。
ソレが比に値しないほど強く思うのは、大和という大好きな人に巡り会えたから。
独りで虚勢を張って生きるつもりのスタンスを、見事に覆してくれたからだ・・・
恥ずかしさも忘れて時を噛みしめつつ、再び手を繋ぎながら駐車場へと目指す。
観客でごった返すロビーを一瞥しながら、その人だかりを通り抜けようとした瞬間。
「あの…、少々宜しいでしょうか?」
「・・・え?」
不意に呼び止められたうえ肩へ手を置かれた私は、ビックリしながら立ち止まれば。
手を握る大和も怪訝な顔つきで足を止めて、2人でほぼ同時にその声へと振り返った。
「…あの、何か?」
そうして対峙した声主も観劇をしていたのか、着物を召した若い綺麗な男性の姿。

