私の顔つきにホッとした表情を見せた大和と、その場を後にする事にした。
手を離さないという約束を守ってくれる彼に誘導され、ロビーへと向かっている。
「真咲…、大丈夫か?」
「うん…、お父さまにはお礼を伝えなきゃね。
あんなに良い席で見せて貰えて、色々な事に気づけたもの…」
「・・・そうだな」
一階席の端という凄く見やすい豪華な席は、少なからず緊張を強いられたし。
近すぎて観るのが怖くなりそう…なんて、ムダに不安ばかりが募っていたけど。
この席だからこそ、見えた事柄が沢山あって、そして優しい気持ちになれた気がする。
「どれが正しいなんて分からないけど、でも…今日は来て良かったよ。
ずっと傍に居てくれてありがとう、大和…」
「…俺もありがとう」
私の言葉の意図が伝わったのか、立ち止まり振り返った彼の表情に安堵させられる。
“ありがとう”なんて言う必要ないのに…、やっぱり大和は優しいみたいだ。
甲斐氏に父という意識は全く持てないし、これからもソレはあり得ないと思う。
出産の時も、それからずっと…、まして葬儀にも姿を見せなかった人だもの。
だけどね…母が愛し抜いた人が、尊敬に値するほど偉大な人だとよく分かったの。

