舞台上で彼を囲う人たちからの紹介は、傍から聞いていても尊敬の念が伝わって。
高く厳かな舞台上で笑うその人は、やっぱり別世界の人間なのだと納得していれば。
そんな役者たちの挨拶が終わって、最後に中央に正座する主役の口上の番だ。
挨拶をする為に顔つきが変わったせいか、なぜか私は大和の手をギュッと握っていた…。
「ご紹介に預かりました、甲斐 廉太郎でございます。
この度の口上の仕様変更につきましては、深くお詫びを申し上げますと同時に。
人生が一期一会でありますように…、今日ご覧のお客様にどうしてもお伝え申し上げたく思います。
今日という日にお越し下さり、私というしがない者を見届けて下さり、心より“ありがとう”――
そして最後に…、いづれもさまにおかれましては。
今後ともなにとぞご支援、ご鞭撻のほど、御(おん)願い奉る次第にござりまする…」
静まった座内で挨拶を終え、両手の四つ指を床へ垂直に立てて深く頭を下げた甲斐氏。
「素晴らしい、日本一…!」
シンと時を止めたような静けさは、徐々に湧き始めた拍手によって打ち壊されて。
「・・・っ」
「真咲・・・」
観客の反応に安堵の表情を向けた彼に、私はもう涙が止められなかったの。
「凄い、ひと…だねっ?」
「ああ、素晴らしい人柄だな」
拍手喝采の中で肩を引き寄せてくれた大和と、その光景を目に焼き付けていた…。

