「真咲さん」
「…はい?」
すると背後からお父さまに呼び止められて振り返れば、真剣な眼差しをしている。
「…今すぐじゃなくていいから。
さっきの事は考えておいてくれるかい?」
「…少しだけ、考えさせて下さい」
主語の抜けた“ソレ”の話が浮かび、コクンと頷いてたどたどしく答えた私。
「それは勿論だよ。昨日の今日で出せる答えじゃないからね。
ただ悪意は無い事は分かって欲しんだ…、申し訳ない」
「あ…、それは承知してますから!お父さまが気に病む必要は…」
「…ありがとう」
軽く頭を下げたお父さまの言葉に被せると、優しく微笑んでくれるから。
「…いえ、ありがとうございました」
どちらかと考える以前に、拒否したい感情を伏せざるを得なかったの・・・
「…真咲、疲れたか?」
「…え?…ううん、大和こそ大丈夫?
運転代わってあげたいけど、この車だと心配…」
「いいよ。俺は丈夫が取り柄だし」
ボーっと移り変わる景色を眺めていると、尋ねられた言葉でハッとする。
運転免許はあっても車幅も排気量も大きい大和の車は、とても運転出来そうになく。
何より助手席に座りながら無言だったという、今さらなダメ気遣いを笑ってくれた。

