自分の感情さえ苦しいとは思いたくなくて、すべて隠していたけど…。
「悪いけど、俺は絶対真咲を離さないから覚悟しろよ」
「っ、私だって…、離れない、よ…いいの?」
「もし真咲が嫌になって逃げられても、追い掛けて離さないから安心して」
そう言って笑ったあと、まだ濡れている頬を包み込んでキスをくれた。
時間にして十秒程度なのに、触れる唇ですら大和の優しさが伝わってくるから。
「…大和・・・」
キスを終えて目を開いた先に捉えた彼を自然に、ギュッと首元に抱きついた私。
「…初めてじゃん」
「・・・ん?」
すると暫くしてから、嬉しそうな声色でポツリと呟いた彼の言葉に反応すれば。
「真咲から抱きついてくれたの」
「…え、…そう?」
その言葉に気恥ずかしさを感じて腕を放すと、扇情的な眼差しと瞳が合致して。
「…ホントは今すぐ押し倒したいけど、ココは退けるよなー」
「え、あああー、お、お父さま…!」
何故かしらこのタイミングで私は、置かれている状況を思い出す始末だけど。
「ハハハッ、やっぱり真咲って天然だ!
親父は気を利かせて、とっくに書斎に戻ったから安心しろ。
こんな可愛い真咲、誰にも見せたくないしね?」
重苦しさを払拭するように、ハハッと笑ってくれたから私もつられてしまったの。
自分で作り上げてた鉄壁なんて、ホントに脆すぎる無意味の長物だったね…――

