アノ人に対して抱いてきた、ドロドロした醜い思いを晒したくなくて。
誰にだってそう、一線を置いてテリトリーに入られないよう阻んで来た私は。
結局は人を信頼せずにヘンな悟りを開いて、アノ人と同じ事をしていただけだ。
いつだって周りに支えられて来て、その温かさに触れて生きてたのに・・・
「うう…っ、ひっ…、く…」
「大丈夫、大丈夫…」
泣きじゃくる格好悪い私の頭を、ポンポンと撫でてくれる大きな手が温かくて。
その大和に寄り掛かった態勢で、ずっと胸に痞えていた思いを吐き出すごとに。
「今まで真咲が苦しんだ分も背負って、俺が幸せにするから。
頼むから、泣きたい時は頼ってくれる?」
「うぅ、あ、りがと…っ」
弱い部分を見せる事が嫌で、いつだって体裁を気にして必死だったのに。
大和の受け止めてくれる手と優しすぎる言葉の前では、ソレがバカらしく思えるから。
いつだって願ってた、素直になりたいと蝕んできたモノが涙として流れていく。
「一人で苦しんだ分、それ以上に俺と一緒に幸せになろう?」
「っ、うん…――」
泣き過ぎてグチャグチャな顔の私を、フッと目を細めて笑う彼に頷けば。
優しい指先がそっと涙のしずくを辿って、拭ってくれるから笑顔になれる。

