恋 理~renri~



本当は自分が認められない子なのだと分かった瞬間、もう頭の中は真っ白で。



腑に落ちなかった部分のパズルが挟まる度、余計にパニックに陥りそうだったし。



それこそ、母がその人と続けてきた“コト”に、吐き気がするほど嫌悪感も感じた。



だけど母が晴れやかな笑顔を見せるから、私も一緒に笑って誤魔化すしか無かったの。



“真咲…、お母さんを許してくれる…?”


“ゆっ、許すも何も…、2人きりの家族でしょ?”


一頻り笑い合ってから、ギュッと抱きしめてくれた母からフリージアの香りがして。



“そうね、真咲がいてくれて良かった”


ふつふつと沸き上がっていた思いを全部、グッと心の奥底へ呑みこんだのに――




「わ、たし…っ、あの時、言えなかっ…の!お母さ、んの子供で、良かっ、た…って。

あれ、から、一度も…!わっ、たし…、ひ、どい子供だっ…」


戸惑いながらもいざ口にしてしまうと、止まらなくなるのは人間の性で。



鉄壁がベリベリ剥がれる度に、どんどん現れて来る自身の醜いドロドロした感情。



「大丈夫大丈夫…、真咲の気持ちはお母さんに伝わってた筈だよ。

お互いに信頼し合ってたから、敢えて言葉がいらなかっただけだ」


「う…っ、ひっ…、け、軽蔑し、ない、の?」


「何で…?でもさ、もっと早く出会って助けてやりたかった」


抱き寄せたままで、あやすように背中をポンポンと叩いて宥めてくれる大和。



口外しないと約束してても口頭だったのに、私は信頼のおける人にも言えなかった。



「…く、あ…、りがとっ」


それは本当の自分の感情を見せた時、大切な人が離れていく事が怖かったんだ・・・