恥ずかしいなんてモノじゃない…、“今日だけは失敗しない!”ミッション大失敗で。
うっかり口を滑らせる事も仕事ではあり得ないのに、大和絡みとなるとダメだね…。
「…す、すみません」
笑ってくれて助かったとはいえ、何とも間抜けな発言が申し訳なくて謝罪をすれば。
「もう、謝る必要なんて無いわよ。
ていうより、今まで結婚の“け”の字も言わなかった大和だし本当に驚いたの。
実のトコロね、私とお父さんは大和は結婚しないと思ってもう諦めていたから…。
私たちこそ、大和を選んでくれてありがとう」
「…あ、ありがとうございます…っ」
お母さまが宥めるようにしてくれた言葉が、あまりに贅沢すぎるモノでグッときて。
「あら…私って余計なコト言ったかしら?」
「いつもの事だろ?」
「まっ、不肖息子に言われたくないわね…!」
大和と出会えて、大和を好きになって、その彼と結婚出来る私は幸せすぎて怖い。
今までは人との交わりを拒んで…、自ら一番大切なモノを失くしていたのに――
「…母さん、そろそろ出掛けないと遅くなるぞ?」
ゆったりと時間が流れていた中、お父さまが不意にポツリとお母さまへ忠告する。
「え…あらヤダ、もうこんな時間…!
あのね真咲ちゃん、亜実ちゃんと出掛けたいんだけどダメ?
すぐに帰って来るから、ゆっくりしててね!ほら、亜実ちゃん行こー」
「わぁーい」
「え、あの…?」
「「行って来まーす」」
矢継ぎ早なお願いに答える間もなく、2人が仲良く手を繋いで和室をあとにした…。

