いつも聞き訳が良くて明るい亜実だけれど、彼女の表情を見ていれば分かるし。
かく言う私こそ、こんなホッと心が落ち着いている事って普段ではあり得ない。
いつも仕事と亜実第一!に、どれだけ能率良く日々を過ごすかに懸けていたから・・・
「今日は本当に、ありがとうございます。
どれも凄く美味しくて…、上手く言えませんが…幸せです――」
口をついて出ていた言葉とともに、向かいの席のお母さまに笑い掛けていた私。
仕事ではどれだけ業績を上げるかが勝負の営業にとって、お世辞はホントに朝飯前。
…だというのに、今は無心の中で思って事が勝手に飛び出たような感覚だ。
きっと温かなご家庭の空気が、私の荒んでいた心を解きほぐしていたのかな…。
すると、幾許か目を丸くしていたお母さまがニッコリ笑ったあと大和を一瞥する。
「大和…、アンタには勿体ない子だわ」
「ハハッ、だろ?」
「ええ!?わ、私なんか勿体なくも何ともありません…!
寧ろ貰って下さって、ありがとうございますです…!」
そんな2人にブンブンと頭を振って否定すれば、意味不明な発言をかましてしまう。
「ハハハッ!真咲、最高…!」
「ま、真咲ちゃん…、ダメだわ可笑しい…!」
2人の大笑いによって我に返れば、もう穴があれば直ぐにでも入りたくなった。
オマケに亜美と会話をしていたお父さまで、肩を揺らして笑いを堪えているし…。

