思わず涙線が弱まってしまい、瞳が潤んでしまうのを堪えるのが必死な私。
親と呼べる唯一の存在だった母を亡くしてから、家族は大切な亜実1人きりで。
絶対にこの子だけは幸せにしたい…、そんな思いだけで毎日生きていたのに。
それで幸せだった筈なのに…、大和に出会ってから欲張りになった気がする…。
「亜実ちゃん、じじ・ばばに早く会いに行こうか?
早く会いたいって待ってるよ?」
「うん!ん…真咲ちゃん、どぉしたの?」
「な…、なんでもないよ?」
「真咲ちゃん、はやくいこー?」
満面の笑みを浮かべる亜実と大和に、フルフル頭を振って笑顔を見せたあと。
「うんっ、そうだね…!」
瞳の潤み加減を指でそっと拭うと、私も亜実の空いた手を取って並んで歩き始めた。
庭園を吹き抜ける風が凄く心地良くて、心までもを穏やかにしてくれるようだね…。
「キャー!」
そうして玄関まであと少しといった所で、突然に甲高い叫び声が木霊した。
すると辺りをキョロキョロする間もなく、もの凄い勢いで駆けてくる人を捉えて。
その人は私たちの目の前で、ピタリと立ち止まった瞬間にしゃがんでしまった。

