恋 理~renri~



“とにかく謝罪すれば、どれだけかは事が穏便に済む”、と思った訳じゃない。



だけど私がソレを繰り返す度、宇津木くんの心情を逆撫でするだけなのに。



そんな事も知らなかった私は、どれだけ恋愛から逃げて来たのだろう・・・




言葉が見つからずに対峙していると、彼が徐に傍のベンチへ腰を下ろした。



出社時間が近づき始めた大通りの喧騒が届く中、ジッと彼の瞳に捉われる…。




「…すいません、先行って貰って良いですか?」


「え・・・」


突然に届いた言葉でポカンとしていたのだろう、そんな私にフッと苦笑した。




「さすがに今は…、一緒にいたくないっていうか…」


「っ、ごめ…」


「っ、だけど…!仕事は仕事でしょ?」


「だけど・・・」


逃げの手段を封じるようにして、普段の私の常套句を投げ掛ける宇津木くん。




「それなら!俺のためにも、カッコいい真咲さんでいて下さいよ?」


「っ…うん、ありがと…」


グッと泣きそうだったけどソレは間違い…、だから堪えて必死に笑顔を作って。



一歩踏み出せば、ベンチに座ったままで手をヒラヒラ振った彼に心から感謝した…。