ソレなりの経験をしてきた筈なのに…、私は何も解っていない・・・
―――――――――――…
ピンポーン――!
「は、はいっ――!」
エントランスのインターフォンが鳴り響くと、慌てて応対に出た私だけど。
「ざんねーん!私よ、ワ、タ、シ…!」
「…いま、開ける…」
「うわっ、シカトしないでよ!」
ドキドキしながら出たのに、やって来たのは泉で意気消沈してしまった…。
「何なの、そのムズカシイ顔――」
「…ちょっとねぇ」
ドアを開けた瞬間、訝しげな表情で開口一番の言葉がコレだ。
あれから亜実を迎えに行ったあと、急いで夕食の準備や掃除に追われて。
それなりに綺麗にしているつもりでも、気になりだせばキリがない…。
それ以前にこのマンションには、男の人が初めて来るのよね。
「はー…ノド乾いたぁ、紅茶入れてよ」
「はいはい…」
今日もズカズカとリビングへ向かう泉に、ただ苦笑しか出来ない。
あー…もう、ドキドキ・ハラスメントだわ・・・

