バタバタと慌ただしく、作成途中の書類やUSBメモリをカバンにしまったあと。
「それでは、お先に失礼します」
「お疲れ様ですー」
まだ課員の大半が残っている2課に声を掛けて、フロアを一目散に飛び出した。
朝同様に更衣室に入った途端、仕事スタイル全てをサッと取り払う。
アップヘアを下ろせば緩いカールはつきながらも、いつもの髪型に戻る。
そして高ヒールパンプスから、通勤に使用するドライビングシューズへと履き替えて。
そんな仕事道具一式をロッカーへ入れれば、ようやく退社が完了となる…。
こんな面倒なコトを、イチイチする理由。
仕事スタイルだとどうも怖くみえるらしくて、会う度に亜実が怖がるから。
…なんてソレは一理あるけれど、亜実を言い訳にしているだけだ。
仕事とプライベートの境を“どこか”で作らなければ、身が保てそうにないから。
不器用なのか、上手くメリハリをつけられナイ…。
だから、どうしても時間がなくて、そのままのスタイルで亜実を迎えに行けば。
仕事モードの顔つきが取れなくて、怖がられてしまうという訳だ・・・